CBNの副作用と効果が現段階では同じ?その理由とは?
この記事はKush JPで長年カンナビノイドの取り扱いを行ってきたプロのVapeリキッド製作者によって執筆されています。
目次
CBN(カンナビノール)とは?
カンナビノール(CBN)は、CBDなどと同じ大麻やヘンプ由来の化合物で、1896年にマリファナから作られるハシシという凝縮物から分離された初めてのカンナビノイドです。大麻草には500種類を超えるテルペンやフラボノイドといった化合物が含まれており、これまで100種を超えるカンナビノイドが発見されています。最も有名なものはテトラヒドロカンナビノール(THC)で、強力な向精神活性という副作用が伴うことがわかっており、日本では麻薬として規制され、違法とされています。一方で、2番目に有名なカンナビジオール(CBD)は向精神作用などの副作用が無く、抗菌や抗炎症、ストレス軽減や睡眠補助など、様々な利点がある可能性があると人気がでて、合法的に食べ物や飲み物、オイルやカプセルといった商品として販売されています。CBDは近年エピジオレックス(Epidiolex)という難治性てんかんの治療薬として日本でも使用が認められるようになったことは記憶に新しい出来事です。
そんな中、最近新たに注目を集めているのがCBNです。アメリカでは痛み、睡眠、食欲増進の効果が期待され、様々な商品が発売されていますが、前述の通りこの化学物質に関する研究は限られていて、効果や副作用に関しては不明です。多くの人々に知られている効果は主に睡眠改善についてですが、CBNが睡眠に効果があるという研究の多くが動物を対象にしたものや、THCと同時に摂取するとどうなるかなどであり、CBN単体でヒトを対象に睡眠について研究されているものは非常に少ないのです。より詳しく知りたい方は「CBNとは?CBDやCBGとの違い、効果やおすすめ摂取方法を解説!」をご覧ください。
CBN の成り立ち
CBNはTHCが酸化・分解されることで生成されるため、非常に乾燥した大麻草にCBNは自然に多く発生することは確認されています。しかし、自然に成長した天然の大麻草に含まれるCBNの量は非常に少ないため、商品に用いられる原料は直接植物から抽出されたものではなく、その他のカンナビノイドから精製されることが一般的です。なお、製品の原料となるCBNアイソレートの効果については「CBNアイソレートの口コミと最新の研究を解説!その驚きの効果とは」に記してあります。
CBNと睡眠の関係において、「乾燥した古い大麻草を吸引した人々が眠気を感じた」という有名な話があります。実際、1970年代、1980年代に行われた小規模な研究によると、THCと同時にCBNを摂取した研究の参加者は、THCとCBNを同時に摂取した方がより強く眠気を感じたという報告があることも事実です。しかし同研究では、CBN単体ではそのような効果が見られなかったと報告していることから、CBNだけで摂取した場合の効果についててはこの時点ではよくわかっていなかったということです。そこで次に、CBNがどのように作用するのかその仕組みについて確認してみましょう。
CBNはどのように働くのか
アメリカ政府によるがん研究の中心的なサイトであるNarional Cancer Instituteの情報によると、CBNは潜在的に免疫抑制作用と抗炎症作用があると言われています。その理由は私たちが体内に持つCB2という受容体へCBNが働きかけることがわかっているからです。このCB2という受容体を包含するシステムを、エンドカンナビノイドシステム(ECS)と言います。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは、動物の体を健康に保つための重要な生体システムです。エンドカンナビノイシステムについて説明する時、必ずと言っていいほど「恒常性」という言葉が使われます。恒常性とは、体の中や外の環境が変化したとしても自身の身体の状態を一定に保とうとするシステムです。たとえば、外気温がマイナス20℃の極寒の地に行ったとしても、40℃を超える砂漠地帯に行ったとしても、私たち人間の体温は大抵36度前後に保たれていますよね。これがホメオスタシス、恒常性、と呼ばれる重要なシステムです。このエンドカンナビノイドシステムについて説明している有名な2018年の論文を見ると、エンドカンナビノイドシステムは主に3つの要素で構成されていることがわかります。一つ目は私たちの体内で自然に作られる「内因性カンナビノイド」、二つ目が内因性カンナビノイドや、体の外から入ってきた成分をキャッチするための「カンナビノイド受容体」、そして最後にこれらの成分の「分解酵素」から成っています。
これら三つの要素がどのように作用するかというと、内因性カンナビノイドが体内で作られ、カンナビノイド受容体に結合して(くっついて)作用し、体内の痛みや食欲、免疫、幸福感や炎症反応の調節、記憶の形成や学習能力などに影響を与え、酵素によって分解されその作用が終了するという仕組みです。驚くべきは、「カンナビノイド」は私たちの身体の中で自然に作られているということです。この内因性カンナビノイドとは、大麻に類似した作用と構造を持つ物質であり、日本臨床カンナビノイド学会の情報によると、全部で10種類あることがわかっているそうです。中でも有名なものが、アナンダミド(AEA)と2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)です。
カンナビノイド受容体
これらエンドカンナビノイシステムの構成要素の中でも今回のテーマであるCBNとその副作用について知るために重要なポイントは「カンナビノイド受容体」です。カンナビノイド受容体には主に以下の種類があります。
CB1R
CB1受容体は特に大脳皮質、海馬、基底核、小脳などに多く分布しています。これにより、運動制御、記憶、痛覚、感情処理などの機能に関与しています。
CB2R
CB2受容体は主に免疫系細胞に発現し、免疫応答や炎症反応の調節に重要な役割を果たしています。
CB1RとCB2RについているRとはReceptor(受容体)という意味です。先ほどご紹介した内因性カンナビノイドのアナンダミド(AEA)は脳内麻薬としても知られており、CB1受容体に結合し、痛みの調節や気分の安定、幸福感、食欲を高める役割を果たします。2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)はCB1とCB2の両方に結合し、免疫応答や炎症反応の調節に影響を与えます。このように、私たちの体内で作られたカンナビノイドはCB1とCB2に作用して様々な影響を与えていることがお分かりいただけたことと思います。つまりここでは何が言いたいかというと、これらの受容体に何かしらの成分や物質が働きかけることで、気分や食欲、炎症、痛みなどがコントロールできるということです。そして、これらの受容体に働きかけてなんらかの影響を与える物質の一つが、CBNなどのカンナビノイドであり、このECSをターゲットとした医薬品開発も進められてきました。
実際2006年には、このECSをターゲットとした医薬品がヨーロッパで発売されています。それは「リモナバント」という肥満を改善する薬です。この医薬品がどのように作用して肥満解消をするのかを説明する上で、重要になるのがCB1受容体への働きかけです。先ほど、AEAはCB1受容体に結合することで食欲を高めるとお伝えしましたが、実はこれはTHCによる「マンチ」になるメカニズムでもあります。CB1に働きかける成分を摂取すると精神作用が発現すると共に、空腹感を感じます。大麻を吸うとハイになると同時に無性にお腹が空くのは、大麻に含まれるTHCがCB1に働きかけるからです。これが大麻による向精神作用とマンチのメカニズムです。一方でTHCとは逆に、リモナバントはCB1受容体に拮抗することがわかり、食欲を低下させる効果があるとされ、肥満症の治療薬として製品化されたのです。リモナバントは確かに体重減少に効果があったのですが、うつ病と自殺念慮という重篤な副作用が報告されたことから、発売から2年足らずで市場から撤退したのです。
このように、エンドカンナビノイドシステムは、人体の多くの生理機能を調節する重要なシステムであり、中でも、成分がCB1とCB2に対してどのように働きかけるかによって、人の身体に効果や副作用をもたらすことがお分かりいただけたと思います。ここまでのことを踏まえて、CBNの副作用について見てみましょう。
CBNの潜在的な副作用
カンナビノール(CBN)の効果や副作用について考える前にまず、副作用という言葉について理解しておく必要があります。日本の厚生労働省の資料によると副作用とは以下のことを指すようです。
「〜副作用とは、医薬品と事象の発生との因果関係が疑われるという事実を特徴とする。 〜日本では、投与量にかかわらず、医薬品に対する有害で意図しない反応を副作用という。」
つまり副作用とは、医薬品に対する意図しない反応のことを指すことがわかりますが、CBNは医薬品ではありません。そのため、「CBNの副作用」という言葉そのものを使用すること自体が間違っているということです。なお、英語のside effectという言葉を見ると、イギリスのCambridge Dictionaryでは
「薬物、治療、またはワクチン(病気の発症を防ぐために人の体内に注入される物質)の主な意図された効果に加えて起こる不快な効果」
とあります。こちらは日本における「副作用」とは異なり、何らしかの症状や疾患の治療や予防をする上で、意図しない効果などにも副作用という言葉が使われていることがわかります。つまり、この場合の副作用という言葉には、「何らかの成分をある目的のために使用したときに、その目的以外で発生する事象や反応」であると言えます。これらを踏まえて「CBNの副作用」について考えてみましょう。まず、大前提として、CBNは研究の数が少なく、既存研究の多くは、予備的な研究や動物に対するものであるため、人への影響について調査されたものは少ないのです。そのため、CBNにはどのような効果があるかがはっきりしていないことや、医薬品でもないことから、現段階では副作用に関しては誰もわからないのです。
「CBNの副作用」という言葉が生まれた背景には、おそらく「CBNが持つ望ましくない効果」を「CBNの副作用」と人々が捉えた可能性があります。そこでまず、多くの人はどのような印象を持っているのか、または摂取した感想はどのようなものなのかについて海外の有名な掲示板に寄せられていた人々の意見を集めてみました。
- 「CBNはリラックスしたり眠くなったりしますが、神経を緊張させます」
- 「カンナビノイドに非常に敏感なので、CBNでは弱いハイを感じます」
- 「CBNは眠気を誘う効果がはありますがハイにはなりません」
- 「CBNを他のカンナビノイドと混ぜると眠くなります」
- 「CBNを吸引するとクラクラし、そのあとCBGのような高揚感がありますがハイにはなりません」
- 「CBNは体をリラックスさせて、マインドをほんの少しだけ幸せな方向に持って行きますが眠くはなりません」
- 「THCとCBNが含まれるキャンディーを食べると1時間以内に眠くなりますが次の日に起きるのが本当に大変です」
- 「CBNとCBDが混ざったオイルを飲むと、無気力になり眠くなります。軽くハイにもなります」
- 「THCの経験者にはCBNの精神活性効果に気づかない場合があります」
- 「CBNを含む食品を摂取するとよく眠れますが注意しないと眠気が強くなり頭がぼんやりします」
- 「CBNはボディハイや鎮静感を与えます」
- 「CBNは軽い高揚感をもたらします」
- 「睡眠の質をどう定義するかによりますが、CBNを摂取するとレム睡眠が少なくなります」
- 「CBNを摂取すると音楽がよく聞こえる気がする」
これらを見ると、リラックスしたい人もいれば眠りたい人、精神作用を確かめたい人など使用する目的が人によって異なっていることがわかります。中には音楽にも適しているという声もあります。CBNにぴったりの音楽のについてより詳しい情報は「CBNが音楽の聞こえ方に与える影響 ~感覚が研ぎ澄まされる体験とは」をご覧ください。そう考えると、「副作用」とは人によって異なることが理解できます。例えば、日中にリラックスしたいと考えている人にとっては眠気は副作用になりますし、睡眠のために使用したいと考えている人にとっては微弱なハイや倦怠感は副作用と捉えることができます。CBNとハイの関係については「CBNの違法性からCBDとの違い、ハイになるとは?まで徹底解説」で詳しく解説しています。つまり、CBNの副作用はCBNによって得られる何らかの効果と等しいと考えられるので、効果=「副作用」としてまとめると、以下のようなものが挙げられます。
- 眠気:眠気は最も多い口コミ効果でした。
- 疲労感:大量に摂取した場合、次の日に疲労感を感じることがあるという報告があります。これの多くは経口摂取、つまりクッキーやグミ、オイルなどの形態のものを口から食べて摂取した場合に発生する傾向にあるようです。
- めまい:ベイプのように吸引摂取した場合や、食べ物として摂取した場合にクラクラとするめまいを感じるという意見があります。高濃度のCBNを吸引した人で、頭部を圧迫されるような感覚を覚えるというレビューなども報告されていました。
- 口渇:口の渇きはTHCで発生するケースが多く、ドライマウス、または口の中に脱脂綿を含んだように口内がカラカラになることからコットンマウスと呼ばれます。この事例はかなり多い割合で大麻を摂取した人に起こります。これがCBNでも起こるようです。
- 食欲増進:食欲が増進する可能性があることが示唆されており、ダイエット中の人にとってみれば副作用と呼べるでしょう。
- 微弱なハイ: 人によっては弱いハイを感じるらようです。
これらの副作用(効果)は一般的には軽度で一時的なものとされていますが、個人差があるようです。中にはCBNを摂取しても何も感じないという人もいます。詳しくは「CBNに効果がないと感じる4つのケースとは?あなたはどのタイプかを徹底解説」をご覧ください。では次に、これらの副作用(効果)はどのような要因によって引き起こされるのかという点について詳しく解説していきます。
CBNの副作用に影響を与える要因
CBNの効果も副作用も明らかになっておらず、影響を与える要因も科学的にはわかっていません。しかし、同じカンナビノイドであるCBDは不安やリラックスにも効果があるとされ、医薬品にもなっていることから、その研究はCBNと比べると多く、副作用などの情報も多く存在しています。もちろんCBDとCBNは異なりますのであくまでも参考程度の情報ですが、以下にCBDによって引き起こされる副作用とその要因についてご紹介します。CBNによって報告されていた”副作用”と比べてみると、一部似通っている部分があることがわかります。
- 眠気:眠気はCBDの副作用として最も一般的です。CBDをその他の鎮静剤などと同時に使用するとその効果が強まる可能性があります。
- 口渇:口の渇きもCBDによる副作用として報告されています。口渇は多くの薬の一般的な副作用として報告されています。
- 食欲減退:CBNでは食欲が増進するという報告がありましたが、その反面CBDでは食欲減退という副作用があるようです。
- その他:その他疲労や下痢、肝臓に影響を与える酵素の増加などが報告されています。
ご覧いただくと、CBDでも「眠気」や「食欲減退」などが副作用とされており、CBDとCBNの副作用(人によっては思わしくない効果)は一部似通っている部分があります。これらのことから、どうやらCBNの副作用=使用目的にそぐわない望ましくない状態と考えて良さそうです。そこで、CBNによってこれらの望ましくない状態を引き起こすと考えられる原因を以下にご紹介します。以下はあくまでも多くのウェブサイトで言われている内容で、科学的根拠があるわけではありませんので、参考までにご覧ください。
- 用量:高用量のCBNを摂取すると、副作用のリスクが増加する可能性がありますので、製品に記載されている推奨される摂取量を超えないように気をつけましょう。
2. 摂取方法:経口摂取、吸入、外用などの方法によって、効果や副作用の現れ方が異なる場合があります。そのため自分にとって最適な摂取方法がどれであるかを見極めるためには色々と試してみることを勧めますが、試す上では必ず少量から試して用量を増やすようにしましょう。
3. 個人の健康状態:既存の健康状態や他の薬物との相互作用により、副作用のリスクが変動する可能性があります。そのため、なんらかの疾患をお持ちの方はCBN製品を試す前に医師に相談しましょう。
CBNを使用する際は以上のことに注意することが一般的には勧められています。では逆に、上記の用法を守らずにCBNを摂取した場合どうなってしまうのでしょうか?そこでここからは、CBNが持つ成分としての特徴と、身体への作用を照らし合わせて、CBNが人の身体にどのような影響を与える可能性があるのかについて詳しく探ってみましょう。なお、CBNの違法性については「CBNは違法?その効果とは? 2024年12月に変わる制度を踏まえて解説」をご覧ください。
CBNの効果と研究中の用途
CBNに期待されている効果には以下のようなものがあります。
– 睡眠促進:CBNは鎮静作用があり、睡眠の質を向上させる可能性があります。
– 鎮痛作用:痛みの緩和に寄与する可能性があります。
– 抗炎症作用:炎症を抑える効果が期待されています。
– 食欲増進:食欲を刺激する作用があるとされています。
しかし上記はあくまでも「期待」されている効果で科学的に立証された正式な効果ではないことは改めてお伝えしておきます。ただし現在も研究が進んでおり、睡眠、緑内障の治療、表皮水疱症の治療、神経保護などの分野で効果が期待されています。中でもカナダにあるInMed Pharmaceuticals(インメッド・ファーマシューティカルズ)が開発中のCBNが配合されたクリームは、表皮水疱症の治療に有望な結果を示したとされ、2023年の6月には第二相試験が完了し、開発が進んでいると発表されています。同企業はカンナビノイド研究では有名で、前述の、CB1・CB2をターゲットとした開発に力を注いでおり、緑内障治療の外用薬としてもCBNが持つ効果に期待が高まり、研究が勧められています。このように、様々な研究が進むにつれてCBNが持つ潜在的な効果がより明らかになるでしょう。
ここで話を戻し、CBNが持つ副作用について考えてみましょう。CBNはCB1とCB2という受容体へ働きかけることによって様々な効果を発揮する可能性があることがわかりました。つまり、冒頭にお伝えした、CBNの副作用と考えられる、眠気や食欲増進、口渇や弱いハイなどの要因を知るためには、CBNがこれらの受容体に対してどのように働きかけるのか、という作用の仕方とその程度を知ることで、より明らかになるのではないでしょうか。
CBNと受容体の関係とは
CBNがCB1やCB2受容体に対してどのような働きかけ方をするのかについて、2017年に発表されたカンナビノイドの分指標的についての研究の中から一部抜粋したものを以下に示しました。これを見るとカンナビスに含まれる様々なカンナビノイドはCB1とCB2に対してどのように働きかけるのかが、よくわかります。
成分名 | CB1 | CB2 |
THC | 部分的に結合 | 部分的に結合 |
CBN | 結合 | 結合 |
CBD | 拮抗 | 拮抗 |
CBG | 部分的に結合 | 部分的に結合 |
CBC | 結合 | 結合 |
THCV | 拮抗 | 部分的に結合 |
CB1に結合する成分
- ご覧いただくと、THC、CBN、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)はCB1とCB2共に結合することがわかります。
CB1に拮抗する成分
- 一方でCBDはCB1にもCB2に拮抗するようです。拮抗とは、これらの受容体に対して本来結合するはずの物質などの働きを阻害するということです。有名な胃薬の働きとして「H2ブロッカー」という名前を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これはH2という受容体に胃薬品の成分が拮抗することで過度な胃酸分泌を抑え、胃の痛みを抑える働きをするものです。この「ブロッカー」と「拮抗」は同じ意味を持ちます。また、THCVはCB1に拮抗し、CB2には結合することがわかります。このTHCVは前述の肥満薬であるリモナバントと同じように、CB1受容体に拮抗することに注目が集まり、リモナバントのような深刻な副作用を伴わずに食欲減退の効果があると期待されているのです。アメリカなどでは、THCVを含む大麻はダイエットウィードと表現されることもあります。
食欲増進/減退のメカニズム
- THCとCBNはCB1に働きかけるため、食欲が増し、CBDはCB1に拮抗するため食欲減退という効果があると言われていることもこの表を見るとわかるのではないでしょうか。
口渇のメカニズム
- さらに、はっきりとわかっているわけではありませんが、2022年の研究ではCB1受容体が顎下腺細胞に存在していることからCB1に働きかけるTHCやCBNは唾液の分泌を減少させ、口渇の原因となっているのかもしれないと言われています。ただし、この研究の概要を見る限り、CBDのようにCB1に拮抗する成分では唾液の量に影響は無かったようです。
このように各カンナビノイドが受容体にどのように働きかけるのかを知ると、どのような影響を及ぼすのかがぼんやりと理解できてきました。では最後に、更に踏み込んでCBNがCB1とCB2それぞれに作用する程度を調べた2つの研究から、CBNが持つ副作用のひとつと考えられているハイについて確認してみましょう。
CBNとTHCを比較した受容体への結合程度
以下の数値であるKi(nM)とは、受容体への親和性を表しています。Kiは阻害定数と呼ばれ、各受容体の50%を占めるために必要な成分の濃度を表します。そしてnMはナノモルという単位を表します。たとえば、その受容体に対して成分AのKi値が100nMで、成分BのKi値が10nMである場合、成分Bの方が少ない濃度で受容体の50%を占めることになりますから、成分Bの方が効果が強い、つまり、この値が低ければ低いほど、受容体に対する親和性が高いということになります。
以下は2017年の研究から、CBNとTHCがCB1という受容体に対してどの程度働きかけるかを調べたものです。
成分名 | CB1 Ki(nM) | CB2 Ki(nM) |
THC | 18±4 | 42±9 |
CBN | 75±4 | 73±4 |
ご覧いただくとお分かりの通り、THCはCBNの約4倍強く働きかけることがわかります。これが「CBNはTHCの¼の精神作用がある」と言われる根拠の一つですが、この結合親和性の度合いと精神作用の強さは直接的に影響するわけではないと言われています。
次は2009年の研究で、これはTHC、CBN、THCVがCB1とCB2にどのように働きかけるのかを調べたものです。
成分名 | CB1 Ki(nM) | CB2 Ki(nM) | 論文内出典元 |
THC | 5.05 | 3.13 | Iwamura et al. (2001) |
35.3 | 3.9 | Rinaldi-Carmona et al. (1994) | |
39.5 | 40 | Bayewitch et al. (1996)
| |
21 | 36.4 | Showalter et al. (1996)
| |
53.3 | 75.3 | Felder et al. (1995) | |
80.3 | 32.2 | Rhee et al. (1997) | |
CBN | 120.2 | 100 | MacLennan et al. (1998a, 1998b) |
211.2 | 126.4 | Rhee et al. (1997) | |
326 | 96.3 | Showalter et al. (1996) | |
1130 | 301 | Felder et al. (1995) |
全体的に見ると、THCとCBNの差は研究によっても調査方法によってもかなりのがあることがわかりますが、THCの方がCBNよりも数値が少ないことは間違いありません。更に、2024年のCBNに関する薬理特性についてのレビューの中ではCBNはTHCの10%程度の精神作用があると言われています。これら様々な情報をもとに、CBNはTHCよりも遥かに弱いが精神作用があると考えられるようになったのです。これが、CBNの副作用である「ハイになる可能性」のメカニズムであると考えられます。CBNとハイの関係については「CBNの違法性からCBDとの違い、ハイになるとは?まで徹底解説」でも解説していますので併せてご覧ください。
CBNの副作用に関するまとめ
CBNは医療的な効果や効能がわかっていないため、副作用についてもよくわからないことは冒頭でもお伝えしました。また、利用者の目的も多岐にわたるため、ある人にとってはポジティブな効果であってもある人にとってはネガティブな効果となることもあるため、この記事ではCBNによる影響を全て「副作用」として説明してきました。はっきりとしたことは言えませんが、CBNが人の体に働きかける作用を調べることで、うっすらとその根拠がお分かりいただけたことと思います。
CBNは、睡眠や鎮痛などの効果が期待される一方で、安全性についての情報はまだ十分ではありません。そのため、CBNを使用する際は、信頼できる情報源からの知識を基に、適切な用量を守り、医療専門家に相談することが重要です。なお、2024年12月12日以降、改正された大麻取締法が施行されたことに伴い、THCの含有基準値が著しく引き下げられました。このことによりCBNを違法と考える方も中にはいますが、CBNは規制対象とはなっておらず、合法の成分です。ただし、「新基準値対応」などの文字が無い製品の購入には注意が必要です。
コメント
この記事へのコメントはありません。
この記事へのトラックバックはありません。